容量2GB!アクセス解析&動画ファイルも可能な無料ブログ。アフィリエイト完全対応。
  最新画像一覧   /    おもしろブログが満載! シャッフル ブログ  /     無料登録  

Possible Spaces V4.4@Uplink Shibuya 4th Nov.2010

  1. 2010/11/09(火) 01:06:30|
  2. ライヴ/イヴェント・レヴュー|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
アップリンク・ファクトリーのステージ中央には椅子が1脚。その後ろにハの字型に左右に開いてテーブルが並べられ、机上では4台のノートPCが鈍い銀色の輝きを放っている。まるで裁判劇の舞台のようなセッティング。

1.Montage(Akira Yamamichi), Sakana Hosomi, Aen TRIO
 照明が落とされ、スクリーンに映像が映し出される。空、海、岸壁、停泊している貨物船、わずかずつ移動するタグボート(?)。画面外から犬の鳴き声、父親と子どもらしき話し声(何を話しているかはわからない)、蝉の鳴き声が遠く響く。気がつくと機影はもうはっきりとわかる大きさになっていて、こちらへぐんぐんと近づいてくる。飛行機の機体がフレームアウトし、頭上を通り過ぎると爆音が追いかけてきて、辺りを押し包む。それが止むと、また微かな環境音が画面外からしみこんでくる。風はないようで、海面はゆらゆらとしたうねりを繰り返す。波の音はしない。まぶしさもない。空には雲がないが、青く晴れ渡っているわけでもない。すべてはうっすら/ぼんやりとしていて、輝きやコントラストを欠いたまま、離れたところで黙っている。付け加えられたリズミックな軽やかさが、二度三度と通り過ぎる。また、機影が姿を現し、こちらへと向かってくる(ことさらにゆっくりと動いているように見える)。空間は自己主張することなく、時折通過する飛行機を無関心に眺めている。低音がもやもやとうごめき、柔らかなドローンをかたちづくる。爆音が通り過ぎると、貨物船がわずかに動いていることに気づく。滑らかに音もなく(まるで何かの機械仕掛けのように)すれちがう船と船。彼方に黒いもやのようなものが現れ、ふっと覆いを脱ぎ捨てたように飛行機の輪郭が現れる。

 カットが少し変わり、横に長く延びた対岸の景色(と言っても岸壁と空だけだが)はそのままに、手前に柵にもたれる人の群れが映し出されると、中高域でのさざめきが繰り返されていることに気づく。カットの切り替えに伴ってサウンドが変化したのか、ずっと以前から鳴っていたのか、その時にもよくわからなかった。やがて再び映像は最初の画面に戻るが、今度は海鳥が中空を舞っていて、それと交錯するように機影が現れ、時々ピントが外れる。その一方では、低音にたゆたっていたドローンが次第にせり上がり、多層による奥行きをつくりだす。Ralph Towner『Solstice』にも似た、永遠へと向かって飴のように伸びていく中低音を軸として、間歇的なビープ音、千鳥足状にもつれたミニ・メロディ、再び現れた子どもの声等がすれ違い、響きの中にそれぞれ空間を開いていく。

 画面全体が沈んだ鈍色へといよいよ傾き、海も空も奥行きを失って、その境目を曖昧にし、おぼろに溶け合うなか、スクリーンに「光の鱗」が現れ、ゆっくりと回転しながら大きくなり、一瞬ピントが合って、両翼に明かりを灯した飛行機の輪郭が姿を現したかと思うと、すぐにまた描き消えてしまう(「周囲がだんだん暗くなってきて、ヴィデオ・カメラのオート・フォーカスの機能が低下したために、自動的にそうなった」と後で山道氏が教えてくれた)。音もまた輪郭をにじませ、水っぽくふやけた響きが半透膜の向こうから滲み込んでくる。子どもの声も、蝉の鳴き声も、足踏みオルガンのたそがれた響きも、ホルンのなだらかな息遣いも、ちりちりとしたノイズさえ、みんなはるか遠く、丘の向こうから聞こえてくるように感じられる。薄暮の中にとけていくうすいうすいひろがり。

 時にはかなりの音量/厚みに達しながら、サウンドの希薄な手触りを失うことのなかった演奏は素晴らしいものだった。サウンド・ループの重ね合わせは、こうした場合の常套手段だろうが、それをはみ出したやりとりも随所に見られた。物語的な展開に寄りかからないだけでなく、耳/肌触りのよい音風景を編み上げることへも向かわなかった背景には、その場で収録した環境音を伴うヴィデオの上映というクレヴァーな確信犯的手法が、功を奏しているように思われる。一方に機械的な乾いた反復と言うべき、少しも物語的でない眺めが常にあることによって、音は心象風景的な縛りからあらかじめ開放されていたと言っていいだろう。しかも、その映像はカメラのオート・フォーカス機能の「エラー」による予期せぬ(人間のコントロールの外にある)変調/変形を含むことによって、まさにそれがヴィデオ・カメラという一つの機械による非中枢的な知覚であることを証し立てているのだ。

2.mori-shige&Marcos Fernandes DUO
 中央の椅子に腰を降ろした mori-shigeがチェロを身体に当てたまま、軽く頭を垂れ、両手を開いて、これから訪れる音の流れに身を浸そうとする。 Marcos Fernandesは前回同様、苦しげに長身を折り曲げて、ノートPCのモニタに顔をすりつけている。虫の声、せせらぎ、水の滴り、枝を踏み折る足の運び‥。mori-shigeはおもむろに弓の両端を両手で握り、チェロの弦に水平に押し当て、わずかに滑らせる。その姿はまるで拡散しながら辺りを押し包む環境音に対し、結界を張っているように見えた。そのように固く結ばれていた身体動作がほぐれ、より伸びやかな動きへとほどけていくうちに、再生されるサウンド・ファイル(録音された環境音)と楽器がいま/ここで生み出す音の実体感の違いが目立ちはじめる。駒のすぐそばを弓で弾き、ごりごりとしたノイズと不可思議な倍音を引き出したり、指板上で「さわり」をはらませて、まるで口琴のように「びわ〜ん」とループ状に響かせたり、あるいは指板をこすり、弦をひっかいたり‥と、mori-shigeは音をかるくもろくこわれやすいものとして、実体感を希薄化し、環境音と相互に浸透しよう、少なくとも共にあろうとするのだが、それでもチェロの音は、たとえどんなにかぼそくとも、「物音」をその背後に隠してしまう(むろんこれは聴き手の生理の問題かもしれないのだが)。

 反対に環境音の側が音量や音像のサイズを大きくしてみても(祭りの練習風景だろうか、太鼓の音や子どもの掛け声が聞こえる)、今度は音景色内部のサウンドの結びつきの強さが災いし、やはりチェロのたてる「物音」はその内部へと浸透することができない。今度はむしろファウンド・サウンドの方が、平面的な分だけ、サウンドの輪郭が鮮明に感じられる。
 韓国に古くから伝わるパンソリの発声の練習法として、滝に向かって声を通すというのがある(確か韓国映画「西便制(ソピョンジェ)」に出てきた)。滝は水の粒子の集まりであり、必ず隙間があるから、そこに声を通すという理屈なのだが、再び現れたせせらぎの音に対し、mori-shigeはことさらにのっぺらぼうなボウイングで返し、あるいは弦を強く引き絞って密度と緊張を高めた剛直な音色で応じるが、やはり「音を通す」ことができない。野外や野外の音が入り込んでくる空間での演奏(自然音との共演)とは、やはり勝手が違うのだろう、私にはチェロがもどかしさに身をくねらせているように見えた。
 
 環境音が列車の振動(にディレイをかけて変調したもの)や踏切の警報機などパルス系へと移行し、チェロのアルコがそうした刻みに惑わされることなく、その上を滑るように奏でられた時、ようやくデュオはひとつの噛合いを得たように思われた。それ以降のmori-shigeは、それまでに比べ、はるかに自由闊達に弾きまくった。たぶんそれ以前の時間帯は、いつもと違う筋肉をかなり使ったことだろう(その点でそれは単なる探りあいや逡巡では決してなかった)。母親と子どもらしき声のやりとりに、指板を指先ではたいてマイクロフォンに物がぶつかるような音をぶつけ、海鳥の鳴き声にはかきむしるような弦のピツィカートが応える。そして最後、次第に音が小さくなっていく水の滴りを見送ったのは、音になるかならぬかぎりぎりのところに不安定に浮かんでいる、弓弾きによるフラジオ音だった。
 もともと環境音/ファウンド・サウンドの側が自体の変化に即応しにくいことから、イマジナリーな物語展開や心地よい音風景の編み上げ、あるいは空間と提示と演奏の単なる併置に終わりやすい、リスキーな試みと言えるが、両者がそれぞれ放つ音のもともとの手触りの違いを見詰め、そこに横たわる断層/アポリアから決して眼をそらさなかったことが、演奏をスリリングな、しかも実のある挑戦としていたことを評価したい。

 企画/演奏の充実に比べ、聴衆の少なさは残念だし、とてももったいなく感じた。今後も「Possible Spaces 可能空間」のシリーズは継続されるようなので、心ある聴き手にはぜひ体験してもらいたいと願わずにはいられない。

2010年11月4日(木) 19:30〜
渋谷アップリンク・ファクトリー
【出演】
 Marcos Fernandes http://www.marcosfernandes.com/
 mori-shige http://www.mori-shige.com/
 Montage(ヤマミチアキラ) http://www.myspace.com/montage_
 細海魚(Maju/Neina) http://www.myspace.com/sakanahosomi
 Aen(鈴木康文/Commune Disc) http://www.myspace.com/communedisc




<<  「アンビエント・リサーチ」第3回リポート!  |  ホーム  |  Machinefabriek, Liondialer, Wink, Yui Onodera+Celer@Superdeluxe 23th Nov.2010  >>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://miminowakuhazushi.dtiblog.com/tb.php/73-30d24fa1

DTIブログって?