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トラッドとの出会い〜奈落への転落(続き) Encounter with Trad Music − Downfall to the Depth (continued)

  1. 2011/07/17(日) 20:17:41|
  2. ディスク・レヴュー|
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  4. コメント:0
 前回言及した月光茶房店主原田さんのブログが更新されて、ブラックホークのお話の続きが掲載されている(7月17日分。前回言及したのは7月13日分)。「ブラックホーク後期」と題された記事を読んで驚いたのは、そこで話題となっている「ブラックホーク・ニュース」の発行日が1980年7月20日で、私が前回ブログで書いたトラッドの出会いとほとんど同時期(私の方は1980年6月から)であることだ。さらには、私が前回「マリコルヌ・ショック」の端緒として採りあげたMalicorne / Almanachが、そのニュースに掲載されており、ブラックホークが従来方針から踏み出した象徴となっている。私たち一人ひとりはそれぞれに異なる人生を歩んでいて、時折、いろいろな出会いがあったりするわけだが、同じ世界に生きている以上、様々な社会条件の変化に同時にさらされていくことになる。たとえ出会わずとも、そこには一種の同期が存在している。たいいていの場合、それは大きな社会現象であって、オリンピックのようなイヴェントであったり、何かの流行であったり、社会制度の変更であったりするのだが、ここでは、それから30年後に出会うことになる2人が、それぞれに東京の片隅で同じ1枚のレコードに出会い、そこにこれまでとは異なる風景を感じ取るということが起こっている。当時、そうした事態に遭遇した人なんで幾らもいないだろうから、本当にマイナーでミクロな次元の話だけれども。まるで映画のマルチ・スレッドの語りのようで面白いな‥と。

 さて、と言うわけで前回の続きを。
「マリコルヌ・ショック」にときめいた私だが、その後、トラッド探求は一時減速してしまう。ブラックホークのような「礼拝所」を持たなかった私にとっては、雑誌記事等が唯一の情報源だったわけだが、当時、トラッドを積極的に紹介しているものなどなかったし、トラッド系に強い専門レコード店も知らなかった。なので、前回紹介した広川氏のレヴューで名前の挙がっていたClannadのフィリップスからの第1作を入手し、その硬質で躍動感のある演奏にしびれたりしたものの(当時の彼らは本当に素晴らしかった※)、当のマリコルヌは「Le Bestiaire」をリリースして行くところまで行ってしまい(その「中世暗黒マグマ」というべきヘヴィさは怖ろしいほど)、続く「Balancoire en Feu」では、中途半端なNW色に失望することになる。
※70年代後半のClannadは本当に輝いていた。 後のニュー・エイジ色はまだなく、インプロヴィゼーションによる演奏の拡大、立体的なコーラス、鮮やかな場面転換は、ペンタングルとマリコルヌの「いいとこ取り」をした感がある。特に第1作冒頭に収められたA Nil Se Ina Ia」には彼らの魅力が詰まっている。この曲は彼らの代表作であり、後に発表されるライヴ・アルバム「Clannad in Concert」では倍以上に拡大されるのだが、この熱演がまたすごい。
 
 それに自宅からほど近かった池袋西武アール・ヴィヴァンに通うようになり、店頭でスタッフにあれこれ教えていただきながら、現代音楽やフリー・ミュージックを聴きはじめ、さらには「フールズ・メイト」直営のレコード・ショップであるイースタン・ワークスが代々木に開店し、もともと廃盤中心の中古盤店だった下北沢エディソンが新譜ショップであるUKエディソン(当初は神保町、後に西新宿)を開いたことにより、プログレ中心だった興味関心の範囲が、所謂「アヴァンギャルド」方面へと大きく展開してしまい、日々拡大して手が着けられなくなってきたこともある。インターネットなどなく、雑誌も「フールズ・メイト」や「マーキー・ムーン」しかなかった時代に、これらのお店のスタッフからいろいろ教えていただいたことは、その後音楽を聴き続けていくうえで大きな財産となっている。この場を借りて、芦川さん、田島さん、山谷さん(以上、アール・ヴィヴァン)、明石さん(イースタン・ワークス)、佐藤さん、森さん(UKエディソン)に感謝したい。どうもありがとうございました。

 そうして停滞したトラッド熱に再び火がついたのは、1984年も秋になって、雑誌「包(パオ)」の発行が始まってからではなかったろうか。アジアン・ポップス、ラテン・ミュージック、米国SSW等といっしょの取り扱いではあったが、英国を含むヨーロッパのトラッドやOcoraやAudivis、Nonsuch等から出ているようなエスニック・ミュージック(「エスノ・ポップ」ではない)を主たる対象に見据えたこの雑誌は、貴重な情報を与えてくれた。編集スタッフに「トラッド/SSWの専門店」である通販レコード店タムボリン店主の船津潔氏が参加していたことが大きい。それまで、まったく通販を利用したことのなかった私は、早速タムボリンにアクセスし、またまた奈落への新たな扉を開けてしまうことになる。
 現在でこそ、米国SSWと英国トラッドに対象をやや絞り込んだ感のあるタムボリンだが、当時はヨーロッパの未知の音源を次から次へと紹介してくれていた。そこで出会ったのが、南仏オクシタンのRosina de Peira e Martinaであり、スペインはバスクのOskorriであり、ハンガリーのMakam Es Kolindaであり、イタリアのNCCPであり、あるいは英国のJune Tabor等である。

 Rosina de Peira e Martina / Trobadors (Revolum)は私にとって何重にも衝撃的な1枚であると同時に、「その後」を準備してくれた貴重な出会いでもある。まずはヴィエル・ア・ルーをはじめとする中世・民族楽器とエレクトロニクスが生み出す過剰な倍音のうねりと、ぶつかりあう2人のしなやかにして強靭な声。「こりゃあMalicorne / Le Bestiaireよりスゴイかも」とクレジットを見ると、そこには同作品に参加して多大な貢献を果たしながら、すぐにマリコルヌを脱退してしまったDominique Regefの名前が記されていた。彼はここでもヴィオールやチェロ、レベック等を奏するとともに、ロジーナ、マルティナの2人と共にアレンジメントを担当しており、さしずめ音楽監督役と言えよう。彼の脱領域的な活動は、この後、Michel Doneda, Ninh Le Quanとのトリオや、ヴィエル・アー・ルーによるエレクトロ・アコースティックなソロ作品へと結実していくことになるのだが、この時点では久しぶりの再開を喜ぶにとどまった。
 マリコルヌのリーダーは、もちろんAlain Stivellの下でギタリストを務めたGabriel Yacoubなのだが、前期においては編曲に秀でたHughes de Coursonがいたし、後期には中世音楽を見事にプログレ化したGryphonからBrian Gullandが参加し、さらにはDominique Regefがいて‥と、才能あるメンバーに恵まれたグループであったことを痛感する。特にマリコルヌ脱退後、しばらくプロデューサー活動に専念したHughes de Coursonは、Makam Es Kolindaの前身であるKolindaを世界に紹介したことで、長く記憶されるべきだろう。Kolindaの音楽は変拍子を駆使した切迫したリズム・ワーク、遠近のある立体的なアレンジメントと劇的な場面転換、むせかえるほど濃密にたちこめる倍音とエキゾティシズム、切れば血の吹き出すような異常なまでのテンション等を特徴とし、マリコルヌを知らなければ間違いなく腰を抜かして立ち上がれなかっただろう、ものすごい代物だった。メンバーが多数交替した(Makamのメンバーと入れ替わった)Makam Es Kolindaは、熟成して角が丸くなり、上質のなめし皮のような艶すらたたえているが、それでもたぎるような血の熱さ/濃さはやはり争えない。

  Rosina de Peira e Martinaから受けた恩恵の2つ目は、オクシタンという「交通の場」にして、「国家に抗する地域」の視界への浮上である。原田さんはマウロ・パガーニの作品に対する私のレヴューにブログで引用してくださっているが、私とて当初から「古来から交通の網の目であり、様々な文化の交錯する地中海の姿をいきいきと活写した歴史的名盤。(中略)彼らはさらに深く掘り進み、複数の文化的源流が絶え間なく交錯/衝突/変容する力動の場へとたどり着いている。」との認識を持っていたわけではない。Rosina de Peira e Martinaの活動を知り、オクシタンについて調べ、地中海に開けていたことにより、現在のフランスにあたるエリアの中では文化先進地域だったオック語圏が、カタリ派信仰を理由にアルビジョワ十字軍の派遣により徹底弾圧されたことを知った。同時にアラン・トゥレーヌやピエール・クラストルの著作に触れ、「国家に抗する地域」について考えたりもした。こうした経験がなければ、90年代になってから出会う仏Silexの作品群に敏感に反応することはできなかったろう。特にカタリ派弾圧を題材としたValentin Clastrier / Heresieのしめやかな強度と魔術的な奥深さに。

 すでにLluis Liachを聴いていて、カタロニアやバスクの地域闘争について聞き知ってはいたのだが(そのは話はまた別の機会に)、そうした「プロテスト・ソング」的な音楽(一刀両断切り捨てているつもりはなく、その中にはもちろん素晴らしい音楽も含まれていることは承知している。念のため)とは異なる文化的なスタンスがそこには確かにあった。もちろんそれは一面ではワールド・ミュージック商法とも関係しており、フランスの国家戦略の一部でもあるのだか。
 先のマウロ・パガーニ作品への評価は、パガーニとファブリツィオ・デ・アンドレによる地中海音楽探求、アレアによる「インターナショナル・ポップ・ミュージック」のための素材渉猟、ブルターニュ/ケルトにこだわったアラン・スティーヴェルから汎フランスへ歩みだしたマリコルヌ、NCCPがあぶりだした地中海音楽におけるアラビア的要素(サラセン人の文化)の重要性、Louis SclavisやMichel Donedaによるトラッドへの先鋭的アプローチ(ドネダの作品にはバスクのトラッド歌手Benat Achiaryが参加しているが、他方、Achiaryの作品にはDonedaとともにDominique Regefが参加している)、Silexの多面的な作品展開等々を知って、ようやく立ち至ったものである。なお、こうした視点からの地中海音楽論を、言わば「裏イタリア」に焦点を合わせたかたちで、今は亡き音楽雑誌「アウトゼア」に執筆したことがある(「長靴の中の小石」)。


 「いやー実はコレがいいんだよね」と、「ディスク・レヴュー」なんだから、おすすめトラッド作品を個別に紹介していくこともできたはずなのだが、トラッドとの邂逅を一期一会のものとして受け止め、いまの自分の音楽の聴き方への影響を考え始めたら、このようなものとなってしまった。おすすめディスクのリストはまた今度ということでご勘弁をいただきたい。ごめんなさい。
自分としては、マリコルヌとの出会いの影響の大きさ、そこから枝分かれしながら伸びていった探求の線の多さに、今更ながらに驚いているところ。ちなみに、マリコルヌは先頃、再結成ライヴを行っており、CD等も発売されている。その様子はyoutube等でも見ることができるが、ここでは再結成に合わせてつくられたと思しき「マリコルヌ 音楽の伝説」なる非公式サイト(http://malicorne.legende.chez.com/)を紹介しておこう。ヴィジュアルが美しいので一見の価値あり。メンバー紹介が再結成参加者だけなのが少し悲しい。ライヴもちょっと「同窓会」的だし。再結成ライヴだけで彼らを評価しないようにご注意ください。



Clannad / Clannad(左)とClannad / In Concert(右)
ゲール・リン時代の味わいも捨てがたいが。
  


Malicorne / Le Bestiaire (Ballon Noir)
泣いても許してくれないくらいヘヴィでハードです。



Rosina de Peira e Martina / Trobadors (Revolum)とDominique Regef / Tourneries
サウンドがうねり倒し、内圧を天井知らずに高め、果てはプラズマ発光に至る。
  


Makam Es Kolinda / Makam Es Kolinda (Stoof)とKolinda / 1514 (Hexagone)
KolindaはHexagoneに3枚あるが、みんなジャケットがちょっとアブナイ。
  


Valentin Clastrier / Heresie (Silex)
もうどうしようもないくらい名盤。



Quintet ClarinettesとAndre Ricros,Louis Sclavis / Le Partage des Eaux
Silexの最初期(1番と3番)のルイ・スクラヴィス参加作品。
六本木WAVEでこのオシャレな装丁に引っかかったからこそ、今がある。
おかげでARFIを知らないのに、トラッド方面からスクラヴィスをとらえられたし。
後から考えると、これって奇跡的な大正解。
  


Michel Doneda / Terra (Nato)
上掲のSilex作品を正しくとらえられたのは、本作が先にあったからかも。

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