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Diatribes(Cyril Bondi / D'Incise)+Jacques Demierre + Jonas Kocher来日情報2

  1. 2012/02/23(木) 23:02:21|
  2. ライヴ/イヴェント告知|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
Diatribes(Cyril Bondi / D'Incise)+Jacques Demierre + Jonas Kocher 来日情報2

■情報は昨日掲載したので、今日はメンバーの写真を大きなサイズで載せてみました。


 
Cyril Bondi




 
Diatribes(Cyril Bondi / D'Incise)





D'Incise




 
Jacques Demierre





Jonas Kocher

ヨナス・コッヘル来日!!  Jonas Kocher Live in Japan !!

  1. 2012/02/22(水) 18:44:27|
  2. ライヴ/イヴェント告知|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
 以前にブログ記事「ミッシェル・ドネダの近作群について」(http://miminowakuhazushi.dtiblog.com/blog-entry-130.html)でご紹介したアコーディオンの内部機構/気候に耳を澄ますエレクトロ・アコースティック世代のインプロヴァイザーにして、現時点でのMichel Donedaの最高の共同作業者であるJona Kochel ヨナス・コッヘルが来日する。

 実際にはdeatribesというCyril Bondiとd'inciseのデュオに、Jonas KocherとJacques Demierreが加わっての4名での来日となるのだが、実は私もImprovised Music from Japanの鈴木美幸さんから「Jona Kochel 来月に日本に来ますね」とうかがって「えーっ」と驚いたところなので、たぶん情報が充分周知されているとは言い難いだろう。「Jonas Kocherスゴイ!」と騒いでいるのは日本で私だけかと思ったら、さすがにそんなことはなくて、彼のソロ作品も結構注目を集めているようなので、少なくとも興味関心をお持ちの方に情報をお届けしようと、ここに告知記事を掲載することにした。
 日本語でツアー情報をまとめたサイトもなく、メンバー4人のHPの掲載情報も微妙に違っていたりするのだが、ここはツアーの軸になると思われるdiatribesの2人のHPからの情報を中心に整理することにしたい。
  

【来日メンバー】
 jonas kocher - accordion : http://www.jonaskocher.net
 jaques demierre - piano : http://www.jacquesdemierre.com
 cyril bondi - percussions : http://www.insubordinations.net/cyrilbondi
 d'incise - electronics objects: http://www.dincise.net

【ツアー日程】 ※現時点での情報。詳しくは各会場HP等を参照してください。
 3月5日(月)  東京阿佐ヶ谷 Next Sunday
           http://nextsunday.jp/
 3月6日(火)  東京四谷三丁目 綜合藝術茶房喫茶茶会記
           http://sakaiki.modalbeats.com/
 3月7日(水)  千葉稲毛 Candy
           http://blog.livedoor.jp/jazzspotcandy/
 3月8日(木)  京都 アーバンギルド
           http://www.urbanguild.net/
 3月9日(金)  滋賀 酒游館
           http://www.shuyukan.com/sakedelic/


 スイスのアート・カウンシルPro Helvetiaの支援によるツアーのようで、おそらくは日本側の招聘元がないため、ツアー全体の案内文やメンバー紹介のようなものは見当たらない。ここでは喫茶茶会記でのコンサート「四重奏、三重奏」の案内文(http://gekkasha.jugem.jp/?cid=42172)とフライヤーを転載させていただくとともに、多少、情報を補足することでご案内に替えることとしたい。

【ツアー案内文】
 世界中で演奏を展開するスイス人デュオdiatribes(cyril bondi+d'incise)を中心にし、ピアノ奏者jaques demierreとアコーディオン奏者jonas kocherが参加した四重奏が初来日致します。東京からは即興ギターの名手、秋山徹次さんとエレクトロニクスとギターを駆使し或る種アコースティックな音質を追求する原田光平さんと、茶会記で独演・即興の会croisements (東京版)を主催するsound performer松本充明が三重奏として演奏します。
 jonas kocher - accordion : http://www.jonaskocher.net
 jaques demierre - piano : http://www.jacquesdemierre.com
 cyril bondi - percussions : http://www.insubordinations.net/cyrilbondi
 d'incise - electronics objects: http://www.dincise.net

 秋山徹次 - guitar : http://www.japanimprov.com/takiyama
 原田光平 - electronics, guitar : http://www.kouheiharada.com
 松本充明 - prepared sitar : http://www.4-em.org

(L,S room)
2012年 3月 6日(火) start 20:00
¥2,500(including 1 drink)
新宿区大京町2-4 1F
お電話 03-3351-7904
メール sakaiki@modalbeats.com

ライヴの案内フライヤー
※クリックすると拡大されます


喫茶茶記案内図



【補足情報】
 来日メンバー4名による編成の録音はないのだが、次の編成での録音は試聴や無料DLが可能なので、ぜひアクセスしてみていただきたい。ご覧いただければおわかりのように、insuboardinations(netlabel)がdiatribesの活動拠点となっているようだ。

diatribes & abdul moimeme
complaintes de maree basse
insuboardinations insubcd02
http://www.insubordinations.net/releasescd02.html
abdul moimeme(two prepared guitars,metalic objects,springs,cymbals,metronome)
d'incise(laptop,objects,various instruments,snare drums,bow,cymbals,gramophone)
cyril bandi(drums,percussions,bow,cymbals,objects,small instruments)




diatribes & phonotopy
partielle d'averse
insuboardinations insubcdr10
http://www.insubordinations.net/releasescdr10.html
d'incise(laptop,objects)
cyril bandi(drums,percussions)
phonotopy(tennis sythar,electric racket)




d'incise, ludger henning, jonas kocher, sciss
d'incise / henning / kocher / sciss
insuboardinations insubcdr11
http://www.insubordinations.net/releasescdr11.html
d'incise(laptop)
ludger henning(laptop)
jonas kocher(accordion)
sciss(laptop)



jonas kocher
solo
insubordinations insubcd03
http://www.insubordinations.net/releasescd03.html
jonas kocher(accordion)




michel doneda , jonas kocher
action mecanique
Flexion flex_001
http://www.flexionrecords.net/?page_id=97
michel doneda (soprano & sopranino saxophone)
jonas kocher (acoordion & objects)





michel doneda , jonas kocher, christoph schiller
/// grape skin
another timbre at42
http://www.anothertimbre.com/page89.html
michel doneda (soprano saxophone & radio)
jonas kocher (acoordion & objects)
christoph schiller (spinet & preparations)
※上記URLにJonas Kocherのインタヴュー(英文)も掲載。



Thee plus one
http://www.jacquesdemierre.com/threeplusone.html
jaques demierre(epinette)
charlot hug(viola,voice)
urs leimgruber(saxophone)
thierry simonot(sound)
※ライヴの記録映像



6ix
http://www.jacquesdemierre.com/6ix.html

jaques demierre(piano)
okkung lee(cello)
thomas lehn(analog synthesizer)
urs leimgruber(saxophone)
dorothea schurch(voice,singing saw)
roger turner(percussion)
※ライヴ演奏からの抜粋

ディスク・レヴュー 2011年ポップ・ミュージック選  Disk Reviews for Pop Music Favorites 2011

  1. 2012/02/20(月) 22:11:44|
  2. ディスク・レヴュー|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
 【前口上】
 これまでの四半期ごとのディスク・レヴューで採りあげてこなかった、よりポップな視点から12枚のセレクションをお届けしたい。とはいえ、フリー・インプロヴィゼーションやフィールドレコーディングのように、関連レーベルやブログ等も押さえて、それなりに網を張ってチェックしている(それでも漏れは多いが)わけではないし、だいたいが幅が広すぎて、そんなことできるはずもない。好みによる偏りも当然あるので、ベスト・セレクションではなくて、あくまでフェイヴァリッツということでご理解いただきたい。なお、2011年リリース作品のみを対象とし、再発作品は初発時に極めて入手困難だったものだけに限定した。2011年になって初めて聴いて感銘を受けた作品ももちろん多数あるので、これは通常のディスク・レヴューの視点からの作品を含め、追って補足したい。
 なお、購入にあたり頼りにしている情報源は、信頼しているレコード店の入荷情報(作品紹介や試聴トラックを含む)と友人からの口コミが主。レヴューに付した試聴トラックもそうしたお店のものが主になっている。以下の各店には、この場を借りて改めて感謝したい(通常のディスク・レヴューで張っている〈網〉についても、以前に多少触れたが、いずれ詳しくご紹介したい)。
  Meditation http://meditations.jp/
  pastel records http://www.pastelrecords.com/
  p*dis http://www.inpartmaint.com/shop/
  Record Shop Reconquista http://www.reconquista.biz/
  Taiyo Record http://taiyorecord.com/
 なお、韓国ソウルではシンチョンの次のお店を愛用している。
  Hyang Music http://hyangmusic.com/



Mark Fry, The A. Lords / I Lived In Trees
Second Langage SL013
MarkFry(vocals,acoustic guitar,cello), Nicholas Parmer(Spanish guitar,piano,
harmonium,accordion,recorders,autoharp,bouzouki,clarinet,bells,percussion),
Michael Tanner(mellotron,12-string guitar,banjo),
Aine O'Dwyer(harp), Jess Sweetman(flute), Steve Bentley-Klein(viola,violin,cello)
試聴:http://www.pastelrecords.com/SHOP/mark-fry_pl-743.html
 アシッド・フォーク名盤『Dreaming with Alice』(1972年)で知られる(というより、ほとんどそれでしか知られていない)Mark Fryの新譜は、はかない期待をはるかに裏切る、驚くべき傑作となった。風にそよぐ葉ずれのように、心地よくさわさわと耳を撫で続ける細やかなアコースティック・サウンドには、マルチ楽器奏者Nicholas Parmerの多大な貢献が明らかだが、彼のソロ活動である Directorsoundと聴き比べれば、どうしてもジャンルの枠組みを参照して「それらしく」仕立ててしまう後者に対し、ここではMark Fryがそうした既成の枠組みには到底収まりきれないファンタジーの大樹を広げ、リスのように遊び心豊かなParmerの演奏力を、天まで伸びる幹、生い茂る枝々へと解き放っていることがわかる。ゆったりとしたヴォーカルと演奏の息遣い、歌詞からサウンドの入念なつくりこみ、蛇腹状態に折りたたまれ、開くと夕陽に照らされた木がするするとお月様まで伸びていくジャケットの意匠(中には種子の入った小袋まで封入されている)、イラストレーションに丁寧に描き込まれた小動物たち‥‥この作品いっぱいに詰まった「小さきものへの愛情」にAnthony Phillipsとの共通点を感じる(彼の音楽の最良の瞬間がここにも確実に存在している)。

※蛇腹状のジャケットを開くと下のように‥




Aspidistrafly / A Little Fable
Kitchen Label KI-007
April Lee(vocal,acoustic guitar,glockenspiel,programming, string arrangement),Ricks Ang(electric guitar, programming),Kent Lee(electric bass),Janis Crunch(piano,chorus),Junya Yanagidaira(piano),Hongayoko(piano),Akira, Kosemura(piano),Haruka Nakamura(guitar),Wakako Hanada(violin),Nina Furukawa(viola), Fumiko Kai(viola),Segen Tokuzawa(cello),Kyo Ichinose(string arrangement)
試聴:http://shop.ameto.biz/?pid=37518097
 シンガポールの男女2人組による作品。滞日中に録音され、日本人ミュージシャンが多くサポートしている。ささやくような歌声。さざめく音彩。陽だまりの暖かさ。隅々まで行き届いたアレンジメント。水彩とチョーク。頬に風を感じ、ふと視線を上げるとまぶしさのない穏やかな眺めが窓の向こうに広がる。グループ名はジョージ・オーウェルの小説『Keep the Aspidistra Flying』から採られたというから「節度ある(羽目を外さない)夢想・冒険」といったところか。居心地の良いカフェか骨董店に流れるゆったりとした時間。セピアにくすんだアート・ブック仕様の装丁もまた愛らしい。

※アート・ブックを開くと‥     最後の頁に美麗なCDが
 



Federico Durand / El Extasis De Las Flores Pequenas
Own Records ownrec56
all melodies and field recordings by Federico Durand
試聴:http://www.pastelrecords.com/SHOP/federico-durand-pl-632.html
 クレジット通りにフィールドレコーディングされた環境音が多用されるが、それは〈外〉を手探るのではなく、ひたすらに〈内〉を見守り、その手触りを確かめるためだけに用いられる。浮かび上がる見たことのない風景。綿菓子のように溶けていく懐かしさ。思い出の糸をどこまでもさかのぼる音の魔法。聴き続けていたら現実感を喪失して、そのまま朽ち果ててしまいそうな、あまりにも危うい甘やかさ。現実逃避型フィールドレコーディング/セピア系アンビエントの極致。




Charalambides / Exile
Kranky Krank158
Christina Carter(voice,electric guitar,piano),Tom Carter(electric guitar, acoustic guitar, acoustic resonator guitar, electric piano,moog,bass guitar)
Helena Espvall(cello),Margarida Garcia(Upright bass)
試聴:http://www.pastelrecords.com/SHOP/charalambides_pl-717.html
ふらふらと震え漂う漂泊の響きを奏で続けて20年。音を絞り込んで移ろうべき余白を充分にたたえた本作は、タイトルからして彼らの原点/本質に回帰した感がある(現実喪失感の強さならこちらも負けてはいない)。Christinaのソロ『Original Darkness』のあらゆる輪郭を溶かす真っ白に輝く虚ろな闇(「白暗淵」と呼ぶにふさわしい)に比べ、こちらは霧状に重く垂れ込め虹のように弧を描くTomのギターが時の経過を引き延ばし、溶解の速度をずるずると遅れさせていく。2人の間に働く然るべきデュオの力学が、燃え尽きることのない活動を支えているのだろう。ハーディ・ガーディにも似た、チェロのノイジーにささくれだった倍音も効果的だ(1曲のみの参加ではあるが)。3:1の横長に区切られたグリッドに、画像をそれとはずらして反復したジャケットの意匠も素晴らしい。



Minamo / Documental
Room 40 RM443
Keiichi Sugimoto,Yuichiro Iwashita,Namiko Sasamoto,Tetsuro Yasunaga
試聴:http://www.pastelrecords.com/SHOP/minamo_pl-751.html
エレクトロニクスやコンピュータによるサウンドとアコースティックな楽器音等を共に活用することは、いまやポップ・ミュージックの現場で幅広く行われているのだから、エレクトロ・アコースティックな視点からサウンドを生み出すことを「実験音楽」とか「電子音楽」等のくくりでとらえることには賛成できない。その点でMinamoはポップ・ミュージックを演奏するグループだと言ってよいだろう(Mimeoの隣に置くのではなくて)。今回は原音忠実度の高いDSD 1bitレコーダーの導入により、彼らの生命線とも言うべきサウンドの質感が鮮明さを増し、よりナチュラルに響くようになった。さらにアコースティック楽器を多用し、前作で用いていたフィールドレコーディングによる環境音の使用を基本的に廃したことが、ここではプラスに働いているように思う。これはおそらく彼らの最終的な編集の感覚とも深く関わっているのだが、環境音という〈持続〉を排し、サウンドと沈黙の差異をきっぱり際立たせたことが、空間の響きに対する彼らの感覚の鋭敏さ/繊細さをより十全に引き出している。



Ben Frost, Daniel Bjarnason / Solaris
Bedroom Community HVALUR12CD
performed by Ben Frost & Daniel Bjarnason with Sinfonietta Cracovia
試聴:http://www.linusrecords.jp/products/detail/5934/
 タイトルはもちろんスタニスワフ・レムの傑作SFから。凍てつくほどに冷ややかな平坦さをたたえた弦のたなびきが、眠りを誘うようにゆっくりと潮を満たしては引き、プリペアド・ピアノがオルゴールのごとく時を刻む(本作が凡百の「ポスト・クラシカル」作品から一線を画すのは、この滑らかながらも覚醒した肌触りによる)。タルコフスキーがバッハ作品の使用に求めた高みを仰ぎ見る崇高さよりも、どこまでも水平に彼方を見詰める眼差し。そこに映るのは分厚いガラスの向こう側のモノクロームな風景であり、生々しい息遣いを欠いて後悔に沈んだ記憶であるだろう。



Balmorhea / Live at Sint-Elisabethkerk
Western Vinyl WEST092
Rob Lowe,Michael Muller,Aisha Burns,Travis Chapman,Kendall Clark,Dylan Rieck
試聴:http://www.pastelrecords.com/SHOP/balmorhea_pl-693.html
 ピアノ、ヴァイオリン、チェロ、コントラバス、ギター、ドラムの6人編成。各ラインのきっぱりとした彫りの深さ、力みなぎる描線の太さもあって、ポスト・クラシカルにくくられるグループによくあるふやけた微温湯加減は、ここには見られない。結構叩いているドラムがまったく浮いていない(バスドラムの強烈な響きが実に効果的)ことが、そのことを証明しているだろう。クラシカルな典雅さ/重厚さもさることながら、時折ヴォイスが導き入れるアメリカーナな空気が、このグループの本来の味わいなのかもしれない。ライヴ録音会場となった、ベルギーはゲントのエリザベート教会の極上の響きが、彼らの演奏をさらに力強いものにしている。



Julien Chirol, Ensemble Nord-Sud / Anya - L'Esprit Des Tambours Sacres
Music Unit ZZA 161803399
Julien Chirol(composition,direction,trombone),Ensemble Nord-Sud(vn,va,vc,cb,fl,sax,cl,tp,cor,perc,vo)
試聴:http://www.reconquista.biz/SHOP/AD1758.html
飛翔するフルート、うねる弦、咆哮する金管、ひたひたと畳み掛ける打楽器隊等によるアンサンブル(マリンバのソロが実に効果的)は、「聖なる太鼓の精」との副題の通り、アンリ・ルソーが描いた幻想のジャングルを思わせる。西アフリカ等に起源を持つキューバの民間信仰サンテリアの独自解釈とのことだが、音楽の組み立ては、バレエ音楽がプリミティヴな不定形の対象を取り扱う際に、多様な音楽言語/音響効果を引用・混交しながら、空間の推移とそこで舞い踊る複数のムーヴメントを統御する仕方(とてつもなく洗練されたモダニズムの暴力と野生のしなやかな優美さ)を思わせる。ストラヴィンスキーによるパレエ・リュス、NYコットン・クラブのデューク・エリントン、冨田勲による『(新)ジャングル大帝』等を参照のこと。



Viceversa En Octeto / Pulsion
レーベル/番号なし pulsion
Lucas Furno(violin), Juan Miguens(contrabass), Juan Pablo Saraco(electric guitar), Lautaro Greco(bandneon), Emiliano Greco(piano), Cesar Rago(violin), Ruben Jurado(viola), Adrian Speziale(cello)
試聴:http://taiyorecord.com/?pid=36934388
http://www.clubdeldisco.com/resena/354_viceversa_pulsion
 アルゼンチン・タンゴの新たな動向としてDiego Schissi Quintetoの先鋭的な演奏が注目を集めており、なるほどいかにも「ポスト・ピアソラ」的な無機質な怜悧さなど素晴らしいのだが、むしろViceversaの若さに任せた突っ走りぶりを買いたい。Greco兄弟を中心としたキンテートの楽器編成はSchissiあるいはピアソラとも同じであり、それにゲストの弦3人を迎えたオクテートも、SchissiのライヴDVD『Tangos:En Vivo』と同じである(ぜひ聴き比べてみて欲しい)。ヴァイオリンやバンドネオンの弾き込み具合に感じられる血の味の濃さ、アンサンブルの急加速/減速時の心臓の鼓動がひとつになるような「運命共同体」的とも言えるスリリングな一体感(Schissiのアンサンブルはもっと「車間距離」を確実に保って模範的)が聴きもの。



コハク / 消えた海、太陽と
pong-kong records 番号なし
miori(singing,guitar),Jules Marcon(bass),Eddie Corman(chorus,keyboard)
試聴:http://www.reconquista.biz/SHOP/PONGKONGKOHAKU1.html
 ポンコン・レコードと言えば「ゑでぃまあこん」のレーベルであるのは百も承知の上で、あえて彼らがサポートに回った「コハク」を採りあげるのは、ミノリのか細いが芯の勁さを秘めたまっすぐな声、近景を射通してはるか遠くを眺めやる眼差し、その場で(反動をつけず、溜めもなく、揺らぎもせずに)すっと立ち上がる歌の在り様、そして頭の中にそのまま流れ込んで静かに像を結ぶ言葉の簡潔な確かさ(「地図を描こう‥どこにもない街を」)による。おろしたての万年筆ですうっと引いた線のように水平なメロディをたどる、一歩一歩確かな足取りに、世界から電気がすべてなくなっても、この歌は残ると思わずにはいられない。



HAWAAII (하와이) / 티켓 두 장 주세요
SY01
Earip이아립 (vocal,guitar,xylophone,shaker)
Lee Ho Seok 이호석 (vocal,guitar,nmandolin,kazoo,tambourine)
試聴*:http://j1muzak.tumblr.com/post/11183001955/hawaaii-two-tickets-please
    http://www.youtube.com/watch?v=MtlVGxiPNnU
 ジャケットに映る女性ちょっとパンクな金髪/サングラス姿に反して、楽しげに「みんなのうた」やボサノヴァを弾き歌う韓国のフォーク・デュオ。ソウルで毎冬に開催されるレーベル・マーケットで購入したので、インディーズであること以外詳しいことはわからないのだが、何しろ女性ヴォーカル(Sweaterのヴォーカルらしいが、こっちの方がステキ)の天真爛漫な伸びやかさが素晴らしい。ハスキーなかすれを少しだけ帯びてジャズも似合いそうなのに、そうした憂いは表に出さずに、雲ひとつなく晴れ渡ったメロディを、もっともらしく気取ったポーズ(はしゃいだり、ささやいたり、アニメ声だったり、R&B風に揺らしたり、不思議ちゃんだったり‥)をつけずにあっけらかんと歌ってしまう自然体が、美しく健康的な素肌の魅力を最大限に引き出している。他の作品に比べ情報が入手困難と思われるので、「試聴*」欄には、彼らを紹介しているブログ記事(英文)とライヴ動画のURLを載せておくことにしたい。



Sandstone / Can You Mend a Silver Thread ?
Lion Production LION648
David Robert Scheirer(guitar,mandolin,vocals),Lourie Brounstein(guitar,vocals),Mario Grella(guitar,mandolin,vocals)&guests(flute,recorder,electric bass,drums,violin,viola,cello,piano,harpsichord)
試聴:http://www.youtube.com/watch?v=CbKNBszXKzA
   http://www.meditations.jp/index.php?main_page=product_music_info&products_id=21
 誰も手に取らないぐらいダサいジャケの中には、70年代に米国ペンシルヴァニアで夢見られた過去の英国の幻が魔法のように詰まっている。慎ましやかなハープシコードと弦、リコーダーのアンサンブルに柔らかなコーラスが重ねられる冒頭からすでに、トラッドからさらに古楽へと溯りつつ、〈いま/ここ〉とは異なるゆるやかな時が流れ始める。「祖母の嫁入り道具をしまい込んだ屋根裏部屋」に忍び込んだ子どもの、埃の積もった家具や黴くさいドレス、セピア色に退色したアルバム等を巡る、はるか彼方にまばゆく輝くあり得ない記憶への、束の間の夢の旅路。当時300枚程度のプレスだったものの再発作品。




ディスク・レヴュー 2011年10〜12月(第2部)  Disk Review Oct. to Dec. 2011 (part 2)

  1. 2012/02/18(土) 00:11:08|
  2. ディスク・レヴュー|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
 【前口上】
 第1部に続いて、よりエレクトロ・アコースティックな視点からの7枚をお届けする。どうしても評文が長くなってしまうのだが、これはエレクトロ・アコースティックな即興演奏やフィールドレコーディングを素材とした作品が、そのサウンド自体を簡単に語らせてくれない(そこに肉薄するために様々な迂回を強いられる)ことが大きい。たとえばPatrick Farmer『Like falling out of trees into collectors' albums』(Consumer Waste 04)は、今回のレヴュー掲載作品に並ぶ優れた作品だが、その素晴らしさを言葉にする術をうまく探り当てることができず、結局採りあげるのを断念した(彼自身によるフィールドレコーディングに対する一見シンプルな、その実複雑に込み入った問題提起も原因しているのだが)。こうした試行錯誤を通じて、サウンドに対する描写分析の深化や新たな批評言語の開拓に努力していきたい。
 なお、以前に予告したように2011年のポップ・ミュージックからの選盤レヴューについても、追ってお送りしたいと思う。ご期待ください。

Patrick Farmer
『Like falling out of trees
into collectors' albums』
(Consumer Waste 04)





Haptic / Scilens
Entr'acte E127
Steven Hess, Joseph Clayton Mills, Adam Sonderberg
試聴:http://soundcloud.com/experimedia/haptic-scilens-album-preview
 盤を真空封入したラミネート・パック(Entr'acteおなじみのパッケージ)の裏側には、使用された音源がピアノや弦楽器、打楽器から、エレクトロニクス、ラジオ、CDプレーヤー、果てはワイングラスや様々な厚さの紙類まで50種類以上も記されている。そのことが如実に物語るように、作品は繊細緻密極まりないミュジーク・コンクレートとなっているのだが、音色の配合や空間への配分のみならず、切断と転換、音の軌跡の交錯と衝突への眼差しが行き届いていることにより、きめ細かなレイヤーの敷き重ねによるスタティックなドローン/サウンドスケープにとどまることなく、即興的な強度をたたえている。音がある眺めに収まりそうになると、そこに亀裂/隆起/陥没/断裂/流出/沸騰/析出/凝固/散逸/沈殿等が生じ、常に過剰さが景色を突き動かし、そこに絶え間ない生成流動を継起させていく。それゆえ、前もって枠組みとしての空間が先にあり、そこにアクターとしての音が去来するのではなく、音が現れ変形を遂げるたびに、新たに空間のモザイクが誕生し、歪み変形しながら、他のモザイクに侵食されて(あるいは侵食して)いくドラマがここにはある。通常のエレクトロ・アコースティックな即興演奏と比較するならば、サウンドの手触りこそさして変わらないものの、各演奏者の輪郭は役割分担のレヴェルですら全く見定め難くなっている(それぞれが持ち楽器であるハープとチェロを手放して、匿名的なエレクトロニクスとオブジェを操作しながら、サウンド特性の均質化がかえって役割分担の固定化を招くに至ったRhodri Davies, Mark Wastell『Live in Melbourne』(Mikroton cd10)と比べてみること)。


Ferran Fages / Llavi Vell
l'innomable
Ferran Fages(composition,acoustic guitar,contact mics,speakers)
試聴:http://www.ftarri.com/cdshop/goods/linnomable/linnomable-19.html
 虹色に輝く昆虫の群れが一斉に翅を震わせ始めたような何とも豊穣な響き(アコースティック・ギターの弓弾きの重ねあわせとフィードバックによると言うが、とても信じられない)が湧き上がり、ゆっくりと巡り、ゆるやかにうねりながら、空間を息苦しいほど強烈な香りで満たしていく。直感的に近いのはRaphael Toralがギターとエレクトロニクスから引き出した無重力感だが、そうした浮遊する透明性とは異なり、こちらは微細なちらつき、ざわめき、きらめきに満ちて、むしろ羽虫の群れがつくりだすランダムな、しかし結果として構築的な(蚊柱を見よ)運動性をたたえている。聴き進めるうちに音はさらに軋轢と緊張を増し、響きの只中に金属質の「芯」がしこり始め、その切り立った危機的な鋭さをますます募らせていく。ロック・アルバム並みに「play it as loud as possible」の表記が添えられており、音量を上げれば上げるほど音は底知れぬ深まりを見せ(聴き手を呑み込もうとするような)、さらに闇の輝きを濃くしていく。40分以上に及ぶ1トラックのみ。150枚限定。


Hiroki Sasajima / Bells
Ahora Eterno Recording AE005
Hiroki Sasajima(all sounds)
試聴:http://ahoraeterno.bandcamp.com/album/bells
   http://www.art-into-life.com/?pid=37846169
 フィールドレコーディングした自然/環境音をあまり加工しないフォノグラフィー(=音による〈写真〉)的な作家ととらえていた笹島裕樹には珍しく(?)、分厚いドローンが前面に展開されており、物音はその向こうで暗闇を透かし見るようにかそけき響きを立てるばかりで、ほとんど現実の音とは思われない。まだ幼い頃、海で遊んでいて気付かぬうちに浜辺から遠く離れてしまい、懸命にもがく足先に深みに淀む冷たい水が触れた瞬間の、重苦しくまとわりつき、粘っこく引きずり込むような、底知れぬ〈虚無〉の感覚がここには宿っている。美麗にきらめくドローン・アンビエントが多数を占める中で、この胸にのしかかる重さ(「金縛り」時の息苦しさを思わせる)はほとんど異様と言ってよい。これまで数作聴いてきた彼の作品で最も素晴らしい。やはり40分以上に及ぶ1トラックのみ。ちなみにベルらしき音は聞こえない。


Philip Corner / Coldwater Basin
Alga Marghen plana-C alga037
Philip Corner(water running from a fauset into a sink), Bill Fontana(microphone)
試聴:http://www.art-into-life.com/?pid=38096227
 Philip Cornerを初めて聴いたのは、同じAlga MarghenからCDリリースされている『On Tape from the Judson Years』だった。60年代初めに彼がアパートの台所のシンクの中で繰り広げたあれやこれや(激しい勢いで注ぎ込まれる水流、たまった水をかき混ぜる荒々しい手の動き、排水溝に飲み込まれていく渦巻き、調理器具や食器類が引っ掻き回され、その他何物ともつかない金属同士が衝突する‥)の極端に暴力的な切断/構成(テープ・レコーダーを壊そうとしているような荒々しいGO/STOP)に眼を見張った。John Zornの先駆と言うべきアイディア以上に、その耳による注視の比類なき強度に。本作品も同じく60年代の発掘録音であり、タイトル通り、台所のシンクに水を滴らせているだけの「演奏」だが、まるでストロボの点滅のように切断された瞬間の運動だけがクローズアップされていた前者と異なり、ここでは澱んだ薄暗さの下、外部からのトラフィック・ノイズや空調の音等に〈汚染〉され、ぼんやりと混濁し染みだらけになった、あるいは切り裂かれ穴だらけになった音響の混成体が、かつてのような〈切断〉を経ることなく、前立腺肥大でちょろちょろとしか出なくなった小便のように、じくじくと垂れ流すままにされる(水音が聞こえない間の「残尿感」のやるせなさと言ったら、もう‥)。これをパフォーマンスの記録としてではなく、エレクトロ・ァコースティックなサウンドとして、つまりはヘテロトピックな音風景として聴くところに、新たな可能性が開けていよう。


Juan Jose Calarco / Aguatierra
Unfathomless U06
Juan Jose Calarco(construction from fieldrecordings & etc.)
試聴:http://unfathomless.wordpress.com/releases/u06-juan-jose-calarco/
 人の移動、列車の振動、機械の作動、鳥の声、水のたゆたい‥継ぎ目なく次から次へと移り変わる音の景色。自らは状況に関与せず、陰からそっと見守るように視点を固定する多くのフィールドレコーディング作品とも、切断の跳躍と断面のカッティング・エッジを見せ付けるコラージュ作品とも異なる音素材への手つきは、実験映画作家ブルース・ベイリー(Bruce Baillie)の「弥撒(ミサ)」や「カストロ・ストリート」等の多重露出による特殊効果を思わせる、キメラ状に入り組んだ、「目覚めているよりもはっきりした夢」にも似た音世界が繰り広げられる。それはタイトル(aguatierra=waterland)通り〈水〉と〈陸〉が入り組んだ決定不能な二重性を表してもいるだろう。ゲニウス・ロキとも言うべき「その場所に宿る多層的な記憶やアウラ」を反映したフォノグラフィーをコンセプトに掲げるUnfathomless(この語自体が否定の接頭辞un-と同じく否定の接尾辞-lessをはらみ持つ二重否定語にほかならない)レーベルならではの作品と言えようか。250枚限定。


Joda Clement / The Narrows
Unfathomless U09
Joda Clement(composition, fieldrecordings)
試聴:http://unfathomless.wordpress.com/releases/u09-joda-clement/
 同じく音風景の多重化を扱いながら、こちらは霧に咽び、雨に煙り、夢にまどろんで、輪郭が幾重にもぶれ、にじみ、色彩もセピアに退色し、あるいは煤け黒ずんで、すでにかたちが定かでない。というより、いくら眼を凝らしても、薄明かりの中、「アイリス」(映画効果の)のようにところどころ影が映る程度でありながら、時折、陽炎のように立ち騒ぐざわめきの中から、妙にはっきりとした物音がコツンと響く。音の焦点を視覚像へと結ばせることにより風景を伝達しようとするJuan Jose Calarcoに対し、Joda Clementが徹底して〈像〉を回避し、茫漠とした気配だけを伝えようとするのは、この音景色の多重化が、彼が子ども時代に父親に連れられて経巡った、録音採集の旅の思い出と重ね合わされているからにほかなるまい。すなわちここでは、原像がすでに夢の曖昧さをたたえているのだ。アーティストが撮影した「その場所」の写真を、レーベルを主宰するDaniel Crokaert(彼はかのMystery Seaレーベルのオーナーでもある)が加工したジャケットもまた常に素晴らしい。Semperflorence, Triple Bath等と並び、いつかまとめて紹介したいレーベルだ。本作は200枚限定。


Antoine Beuger / un lie pour etre deux
Copy For Your Records CFYR008
Barry Chabala(guitar), Ben Owen(synthesized tones,field recordings)
試聴:http://cfyre.co/rds/
http://soundcloud.com/rfkorp/antoine-beuger-un-lieu-pour
 何事もない環境音がずっと背景に流れ、そこに時折(ことさらに間を空けて音数を「節約」した)ギターや電子音が無造作にかぶさる‥‥。しかし、以前にレヴューした同レーベルからのAnne Guthrieの作品において、彼女のフレンチホルンが訥々と奏でるバッハが、環境音の指し示す風景を画面外から伴奏しているようにも、あるいは彼女がその環境音の鳴っている同じ空間の中にいて、まさにそこで演奏しているようにも聞こえ、さらに環境音のミクロな起伏や突如として起こるアクシデントにそばたてられる耳が、決して流麗には進まないバッハの演奏にそのまま差し向けられることにより、響きが粒立ち、ことさらに微分化/異化しながらとらえられることになるという、巧みな仕掛けが組み込まれていたことを思い出そう。本作品でもあまりにも都合よくリズミカルに通り過ぎる自動車、様々に異なる排気音やまれに鳴り響くクラクション、あるいは大音量のカー・ステレオの与える差異/変化、聞こえてくる集団(様々な性別/年齢層)の声の響き具合、何か工事をしているのだろうか、作業の物音や機械の作動音の多彩さ等を考えると、環境音も巧みに編集/抜粋されているものと想像される。さらにギターやエレクトロニクスによるサウンドは、ただ長い間を空けて奏でられるだけでなく、ある時は突如として眼前に立ち上がって環境音のコンテクストを切断し、あるいは環境音の陰に(例えば機械の作動音の合間に)ひっそりと身を横たえる。そして環境音の中からも、自動車の通過音のゆるやかな繰り返しという基調モードから、突如として声や物音が立ち上がり、風景を異化してみせる。そうこうするうちに、たとえば車の通過する向こうに通りがかりの者の話し声や歌声が聞こえる時、手前に掲げられる電子音やふと投げ込まれたギターのストロークは、画面に添えられたサウンドトラック(伴奏音楽)のように聞こえてくる。おそらくは時間指定がもたらしたのだろう最後の断ち切られ方(突然訪れた死にも似た)も、フェード・アウトすることなく、そのまま現実の時間に暴力的に接続するためではなかろうか。こうした多重に入り組んだ決定不能な厚みをAntoine Beugerの作曲(状況設定)がもともと意図していたものなのかはわからないが、少なくとも本作品の演奏者たちは、明らかにそうした可能性を引き出そうとしているように思われる。「ただ疎らに音がなっているだけ」というWandelweiser派への理解は、単なる都市伝説に過ぎない。150枚限定。

背景としてのヒューマン・ネットワーク  Human Network As a Background

  1. 2012/02/17(金) 23:45:25|
  2. 批評/レヴューについて|
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 前回、当ブログに掲載した「『演る音楽』と『聴く音楽』の間」に対して、益子博之が早速に自身のブログで反応を返してくれている(『益子博之のうたかたの日々:「知っていること」「知らないこと」と、「見て/聞いてしまうこと」「見えて/聞こえていないこと」と』 http://gekkasha.jugem.jp/?cid=43768)。議論を採りあげていただいたことに感謝するとともに、今回はこれについて多少補足することにしたい。


 先のブログで彼は、主として私が「ミュージシャンによる作品選定の背景にミュージシャン同士の人間関係を見すぎではないか」との旨を記したことに対して、なまじ「知って」いると「見えた」気になってしまう‥と自省したうえで、あらかじめ知っている/身に着いている情報や枠組みが、いかに知覚/認知に影響を及ぼすかについて、自論を展開している。

 ミュージシャン同士の人間関係が、ミュージシャンによる作品選定に背景として影響を及ぼすのは、言わば当然のことと言える。実際、自分自身あるいは自分のグループのメンバーが参加した作品しか挙げていない者もいる。また、一見、全く異なる作風の演奏をしているミュージシャンの間に共演のネットワークが張られていることも少なくない。たとえば、前回、ジャズから遠い存在の代表として挙げたMike PrideはNate Wooleyと別バンドをを組んでいたことがある(Nate WooleyはPeter Evansと共に現在のNYシーンを代表するトランペット奏者だろう)という具合。ここにNYの演奏者ネットワークの健全な脱領域性を見ることもできよう。その意味では、私の読みは所詮「裏読み」に過ぎない。

 むしろ私があそこで「背景にミュージシャン同士のネットワークを見ること」をあえて問題視した理由は、日本国内では音楽に限らず様々なシーンで、アーティスト間のネットワークというより露骨に言えば社交/交友関係等の人間関係だけで、すべてが語られてしまいがちだからである。そのような理屈に慣れた/染まった読者は「ああ、NYも結局は人間関係なのね」で終わってしまうのではないか。「現地へ赴いて現場を肌で知っている」益子博之が言うんだから‥と、むしろ益子の本来の意図が曲解されてしまうのではないか‥と不安に思ったからだ。

 NYのシーンの動向を人間関係だけに解消することなど、もちろん出来はしない。いまさら「人種の坩堝」と耳タコの表現を持ち出すまでもなく、人種の違いがあり、宗教の違いがあり、政治志向から性生活のパートナーの選び方まで幅広い文化や価値観の多様性があり、それらが公然と表明されている場合も多い。クラシックをはじめ「○○界で成功するためにはゲイでユダヤ人でなくては‥」と噂されているのも確かだが、もちろんそれだけではあるまい。

 別に「誰にでも平等に機会が開かれている」などと、色あせたアメリカン・ドリームを今更持ち上げようと言うのではない。ただ、何かを人間関係に解消しようという目論見は、これらの大小の差異にぶつかってあえなく破綻するであろうことを指摘したいのだ。逆に言えば、「ニッポンの○○」式の日本国内のシーンの整理が人間関係論だけで出来てしまうのは、それらのシーンの構成メンバーの〈均質性/等質性〉が前提として共有されているからにほかならない。つまりは所詮、狭く閉じた世界の中で繰り広げられるオママゴトに過ぎないのだ。


【MIKE PRIDE 七変化】


Mike Pride(dr)とNate Wooley(tp)が共演する「Evil Eye」


フォノグラフィーにも関わるMarcos Fernandesと共演


グループ名もスゴイし、中央の本人もブラック・メタル風


Mike Prideがゲスト・キュレーターを務め、
Bunda Loveで出演するイヴェントのフライヤー


Mike Prideと日本人ヴォーカル/ギターの絶叫ノイズ・ロック
なぜかこれにもNate Wooley参加


Bunda Loveにもゲスト参加するJamie Saft(key)とMike Prideのデュオ
グループ名も過激だがサウンドもノイジー


これはブルース・バンドだそう。グループ名はお菓子の名前なのに。

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